たまりば

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久しぶりの投稿です。

今日は法人税の改正点についてです。

1.我が国企業の国際競争力の向上や我が国の立地環境の改善等を図り、国内の投資拡大や
 雇用創出を促進するため、国税と地方税を合わせた法人実効税率を5%引き下げる〔40.69%⇒35.64%〕。
 このため、法人税率を30%から25.5%へ4.5%引き下げる。


法人税の実効税率を引き下げることが、管政権の目玉政策のように言われているが、現実には大企業の実効税率
は十分低くなってます。これは租税特別措置法という様々な抜け道が用意されているためです。
この点に関しては、池田信夫氏のブログを参考にして下さい。

2.中小法人に対する軽減税率を18%から15%へ3%引き下げる。

私の事務所の顧客はほとんどが中小法人ですので、この引き下げは助かります。
但し、平成20年度の国税庁の統計によると、日本の会社の約71%は赤字法人ですので、29%の会社しか
法人税を払っていません。中小法人では恐らく1/4は赤字でしょう。
ちなみに、平成20年度に税務申告した会社数は、2,574,195社だったようです。

3.法人実効税率の引下げとあわせ、財源確保のための課税ベースの拡大として、特別償却や
 準備金制度等の租税特別措置の廃止・縮減のほか、減価償却速度の見直しや大法人に係る欠
 損金の繰越控除の一部制限等を行う。


減価償却制度に関しては、定率法の償却率が変わります。
現行では定額法の償却率(=1/耐用年数)の2.5倍ですが、平成23年4月1日以降に取得する固定資産については
2倍にするとのことです。
例えば、パソコンの耐用年数は4年ですので定額法の償却率は25%となり、現行では定率法の償却率は62.5%です。
仮に100,000円のパソコンだとすると、定率法の償却額は、1年目が100,000×62.5%=62,500円、2年目が
(100,000-62,500)×62.5%=23,437円、3年目が(100,000-62,500-23,437)×62.5%=8,789円、4年目が100,000-62,500-23,437-8,789=5,274円となります。
改正後の定率法の償却率は、25%×2倍なので50%です。
すると償却額は、1年目が100,000×50%=50,000円、2年目が(100,000-50,000)×50%=25,000円
3年目が(100,000-50,000-25,000)×50%=12,500円
4年目が(100,000-50,000-25,000-12,500)×50%=6,250円
5年目が100,000-50,000-25,000-12,500-6,250=6,250円となります。
このように、現行では初年度に多額の償却額が計上できたのですが、改正案では少なくなります。

繰越欠損金も80%しか使えないようになるなど、このあたりはかなり実務にも影響が出そうです。

ただし、中小法人は減価償却も繰越欠損金も現行のままですので、あまり大きな混乱はないでしょう。

4.雇用や投資を促進するため、雇用を一定以上増加させた企業に対する税額控除制度(増加
 1人当たり 20 万円)(雇用促進税制)、先進的な低炭素・省エネ設備を取得した場合の特
 別償却・税額控除制度、国際的に競争優位性を持ちうる大都市を対象とする国際戦略総合特
 別区域(仮称)内における特別償却・税額控除及び所得控除制度、グローバル企業のアジア
 地域統括拠点や研究開発拠点を呼び込むための所得控除制度を創設する。


雇用を促進するための税制改正はなかなか反対しずらいものです。
確かに雇用は大事ですから政策的にバックアップすることは必要かもしれません。
しかし、正社員に対する過剰なまでの保護や解雇規制が、企業の側に雇用を慎重にさせている面もあります。
また、無理やり雇用を維持させるような政策は産業構造の変革には足かせになる場合もあります。
そのため、非自発的失業者に対するセーフティネットの充実とともに、雇用の流動化を促進するような
規制改革が大事なのではないでしょうか?

5.租税特別措置の徹底した見直しを進めるため、政策税制措置について 109 項目の見直しを
 行い、その結果、50項目を廃止又は縮減する。


基本的には、租税特別措置法を縮小するのは方向性としては正しいと思います。
しかし、個別に影響のある業界からの反発はすさまじいものがあると思われますので、現実にはなかなか
難しいのではないかと思います。

次回は資産税についてです。



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    Posted by 調布市役所前の会計士・税理士 菅野秀樹  at 19:27 │Comments(0)税制改正

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